河伯と呼ばれる水の神の住む翠湖へと、水を乞う人々は古来の作法に従い自らの足で旅をする。
「岸辺の唄」水乞いの儀式のため、領主に金で買われた孤児のスリジャ。方士たちや道案内のエンとともに、遥かな旅に出る。

「予言」"15年後、左手に剣を持つ若者がそなたを倒し、前王の王子が王位を奪い返すであろう"…自らも予言のため命を狙われ、伯父である前王を倒して王位を得た夜、ウカジュが聞いたのは不吉な予言だった。王の残した男子を全て殺し、国中の左利きの男子の左手を切り落とし、運命に逆らおうとするが。

「氷の爪石の瞳」哀しい運命を背負って生まれた姉と弟。ただお互いだけを思って生きる彼らに、安らかな日々は短かすぎた。

　鬼人と呼ばれる魔物と人がともに暮らす東の国のお話。作者曰く、インチキファンタジーだそうだが、なかなかよくできていて楽しい。お話同士がうまくつながっており、長編の歴史ものを読んだ気にさせる。
　のんびり屋のエンの恋話の、先の展開が気にかかる。(笑)